その腕がつかむものは
基本的に彼女が眠るときには、極力いっしょにベッドにいるようにしている。ビールも、眠ってから飲むように変更した。あ、休みで昼ビールのときは別ね。
彼女はベッドに寝転がりながら、最初のうちはテレビを観ていて、ある程度経った後はタブレットで動画を観る。最近のお気に入りはNetflixのPeppaPigか、YouTubeのオモチャ紹介系の動画など。YouTubeの場合は、普通にタブレットを操作して自分の好きなものを観ている。あんまり動画ばっか観せてると、みたいな話もあるけど、まぁいいかなぁと。
入眠近くなると、ミルクを飲んで、寝返りを打ってコロンとこちらを向く。通常はそのままキスしておやすみ、となるのだが、たまに不意にこちらの目をじーっと見つめた後、おもむろに首に手を回し抱きついてくることがある。ほっぺとほっぺがくっついている状態だ。そういうときは、こちらも手を回して小さな背中をトントン、とする。彼女は、首に回した手を更に強くギュッとして、首に回りきらない手のひらで首筋をつかむ。しばらく抱きしめていると離れて、再びこちらの顔を見つめると、大概はニコリと笑って目を閉じる。
このたまにある一連の動作、どこで覚えたのかわからない。けれど、俺が彼女をしょっちゅう抱きしめている内に、抱きしめられるのは心地よいものだと覚えてくれたのかもしれない。しかし、もしそうであるならば、彼女がその動作をするとき、俺は疲れた顔をしているのかな?と少し思った。
あの動作は何にも代え難い幸せが詰まっている。いつまでしてくれるんだろう、と思うと切なくなったりもするけれど。